使えるウェブ会議 システム
I氏のやったことは単にホ−ムペ−ジを立ち上げ、思いつきでネット通販をやってみました、といったような小手先のことではない。
経営メンバーとしてきちんと新たな直販チャネルの可能性を分析し、そしてその新たなチャネルがどの程度の売上をもたらすのかを鍛密に計算した上で、新事業のスタートに踏み切ったのだ。
そこには当然、事業副本部長としての責任があったことは言うまでもないだろう。
第三のカギは、組織運営の価値である。
「経営管理価値」といった言葉の方が的確かもしれない。
組織を改善し、価値や利益がスムーズに生まれていくための仕組み作りである。
管理部門を見直し、より効率よく会社が運営されていく方法を作り上げていくということである。
たとえば経理部門で、伝票のフォーマットを変更したり、あるいは伝票の提出ル−トを変えるといった対応策であれば、現場のスタッフが対応すればすむ話である。
そうではなくて、たとえば経理部門を完全にゼロにしてしまい、すべてアウトソ−シングするなど、ドラスティックに管理部門の構造を変えてしまうような変革を行う場合、それは新しい価値の創造になる。
経営メンバーがみずからの責任と実行力を持って業務改革を行うことにより、組織運営の新たな価値が生まれるのである。
ここでいったん、まとめておこう。
経営メンバーが生み出す価値というのは、これまで述べてきたように、商品の開発と営業システムの開発、そして業務の改革という三点である。
言い方を変えれば、これらを改革し、新たな価値を生み出すことが経営メンバーの役割となる。
そしてこの三点をきっちりと実現できる経営メンバーがそろっていれば、会社は成長を止めることなく回り、成功し続けることができる。
逆にこの三点がなければ、会社の成長はどこかで止まってしまう。
第一点の商品価値の創造がなければ、そもそもが魅力的な新商品を開発することができず、売上を伸ばすことはままならない。
第二点の売り方開発がなければ、せっかくいい商品を持っているのに、どんなに作ってもなかなか売れず、やはり壁にぶつかってしまう。
そして第三点の組織運営の改革がなければ、いい商品を売りまくっているはずなのに、なぜか決算期になって蓋を開けてみると、全然利益が出ていないということになりかねない以上挙げた三点は、車の両輪ならぬ車の三輪で、どれが欠けても企業の成長は見込めないということなのだ。
経営メンバーが経営者を支えていく先に述べた三つの価値を実現できる経営メンバーが社内にいれば、社長は本当に楽である。
自分ですべてを考え、実行に移さなくても、経営メンバーたちが自分たちの責任と能力をフルに発揮してばんばん事業を生みだし、そして営業システムを新たに作り、業務を改善して利益を出す構造を作り上げてくれる。
これだけのことを創業者社長がひとりでやろうというのは、ほとんど不可能と言っていい。
ひとりで何でもやってしまおうというのは、美意識としては興味深いけれども、あまり利口な方法ではない。
理想を言えば、会社が設立された当初から、経営チームに業務が分担されていることが望ましい。
だが現実には、起業当初は社長ひとりで何でもこなさなければならない、というケ−スが多いようだ。
たとえば、私が以前取材したあるベンチャー企業の例を挙げてみよう。
この会社は社長の営業力が素晴らしく、トップセールスでどんどん仕事を取ってきていた。
ところが利益が上がらない。
起業した直後で、社員は三人程度。
といっても二人は雑務をこなすアルバイトのようなもので、社長が営業から経理までのほとんどをひとりでこなしていた。
ところがこの社長はセールスは得意だが、経理は得意ではなかった。
だからせっかく仕事を取ってきているのに、請求書の発行がどんどん後回しになっていたのである。
当然のように、代金の回収はできないし、肝心のキャッシュが入ってこない。
それでも社長はトップセールスが面白いから、毎日のように外を飛び歩いて営業に走り回り、どんどん仕事を取ってきていた。
請求書を送らなければ、ということは常に気にかかってはいたものの、あまり好きな仕事ではないから、どうしても後回しになってしまう。
そんなふうにして数か月が過ぎてしまい、気がつくと事業資金は底を尽きかけて、運転資金が回らなくなりそうになっている。
あわてて後から請求書を送ったら、今度は取引先から「今ごろこんなものを送りつけられでも困る」「もう払えない」などと言われたり、トラブルが頻発してしまう結果になった。
せっかく売上は伸びていたのに、社内業務がきちんと行われていなかったために、キャッシュが入ってこない状況に陥ってしまっていたのである。
先に述べた一二つの価値の三番目である「業務改善の価値」がまったく発揮されていなかったどころか、逆にマイナスになってしまっていたということなのだ。
これは相当に極端なケ−スだが、起業当初の段階ではこうした失敗は多かれ少なかれ存在している。
だから一二つの価値を実現できる経営メンバーをフルでそろえるのは無理であるとしても、会社の規模に応じて少なくともひとりかふたりは優秀な人材を取り込んで、経営メンバー的な仕事を任せていくようにしていくのが望ましいだろう。
社長がひとりいれば十分、などということはあり得ない。
起業直後であっても、先に挙げた失敗例のように、社長の不得手な部分がトラブルになってしまい、成長を阻害してしまうという結果になりかねない。
まして年商が五億、十億といった規模にまでなってくると、社長ひとりの力でさらに持続した成長を続けるのはほとんど不可能と言っていいだろう。
起業してから数年程度は、社長が優秀なら、たしかに会社はどんどん伸びていく。
社長が最初の事業モデルを生みだし、それをビジネスへと展開していくパワ−は素晴らしい。
そしてそのビジネスモデルが秀逸なら、取引先や消費者から評価され、売上は間違いなく伸びていくはずだ。
だがある程度まで成長を遂げると、最初のビジネスモデルは陳腐化してしまう可能性が高い。
あるいはビジネスモデルが陳腐化しなかったとしても、せっかく開発したニッチ市場が後から参入してきた大手企業に荒らされてしまったり、または社内の雰囲気が停滞してしまったり、いろんなことが起きて会社は壁にぶつかるようになる。
社長はひとりで打開策を考えるが、そう簡単には知恵が出てこない。
考えは煮詰まってしまってどうどうめぐりになり、そのうちに、「どうしてうまくいかないんだ」「自分のやり方は間違っていたのか」と悩んでしまうようになる。
でも決してやり方が間違っていたわけではない。
その証拠に、最初はどんどん売上が伸び、うまく行っていたではないか。
壁にぶつかってしまったのは、最初のビジネスモデルや売り方が間違っていたからではなく、成長のプラト−(踊り場)に差しかかってしまった時に、そのプラトーから脱却するための「テコ」が社内に存在していなかったからなのである。
そのことに気づかないと、社長は悩みに悩んでビジネスモデルをあらぬ方向に転回してしまったり、あるいは料金を下げて無謀な価格競争に走ったり、余計なことをした挙げ句にマイナスのスパイラルに入り込んで最後は失敗してしまう。
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